耐風工学

地域気象モデルを利用した局所風況の数値予測

本研究では山岳地帯に建設される社会基盤構造物の耐風安全性の向上並びに近年急速に拡大する風力エネルギー利用のために,任意地点の風を高精度に予測できる3次元風況予測モデルを開発・実用化する.気象学分野の天気予報技術と風工学分野の局所風況予測技術とを融合することにより,風観測をすることなしに,日本のあらゆる地点での風速・風向を予測することを可能にする.

図1: 局所風況の新しい数値予測手法の開発

この研究では「Dynamical Statistical Downscaling」 と呼ばれる新しい予測手法を開発することにより,分解能は従来モデルの数百分の1(10メートル),誤差は1/3以下(数パーセント)で任意地点における風の予測を可能にする.この研究成果は送電線の設計・保守業務の効率化や鉄道沿線の強風ハザードマップの作成に展開している.

台風シミュレーションによる設計風速の評価に関する研究

社会基盤施設の建設が大量に行なわれてから30年以上が経過し,強風に起因す・・損傷や事故が顕在化しつつある.今後この傾向はますます顕著になると考えられる.土木構造物に及ぼす強風の影響は施設の維持管理と運用面から重要であり,台風時の強風は架空送電鉄塔や橋梁などの社会基盤施設に及ぼす影響が重大である.特に近年台風による大型送電鉄塔の倒壊事故が頻発し,構造物の耐風安全性問題が大きくクローズアップされた.そこで,本研究は従来使われてきた風観測に基づく設計風速の評価手法に代わる,台風の統計的性質及び評価対象地点での地形・地表面粗度を考慮した設計風速の新しい評価手法を確立する.

土木構造物の空力特性の数値予測に関する研究

本研究では任意断面形状を有する構造物の空力特性を高精度かつ短時間で評価できるパソコンベースとする並列計算システムを開発し,長大橋や着氷雪送電線の風振動予測を可能にする.この予測システムはセンタースパン1600mを越す世界で2番目長い橋の耐風設計に適用し,その予測精度と有用性を実証した.また着氷雪のある送電線の風応答シミュレーションに適用することにより,着氷雪送電線の非定常空力特性を明らかにすると共に,冬季に頻発するギャロッピング振動問題の解明に貢献する.この研究成果は実橋梁の耐風安全性設計やギャロッピング振動予測の精緻化とその対策法の開発に適用されている.